奥歯のインプラント
Back Tooth Implant奥歯のインプラント治療には、いくつか気をつけるポイントがあります。
奥歯を失うと、前歯もいつかは失ってしまいます。
怪我、虫歯、歯周病、歯根破折、などの原因により残念ながら奥歯を失ってしまうことがあります。
『奥歯だし見えないから、そのままでもいいのでは?』
『1本だけなら、今までと問題なく噛めるから、放置しよう』
などと考えて、歯科医院から足が遠のいている方は要注意です。
奥歯が抜けてしまうと、噛み合わせが徐々に狂っていき、前歯へのダメージが蓄積します。
そして、前歯に歪んだ力がかかり続けることで、いつか前歯にトラブルが生じてしまうのです。
奥歯の大事な役割とは?
奥歯は顎の上下左右の奥から4本ずつに該当します。
奥歯の役割として以下が挙げられます。
- ご飯を噛みくだく
前歯には食べ物を認知する役目、奥歯には食べ物を臼のようにすり潰す役目があります。
奥歯を1本失ってしまうと噛む力は約30%低下し、食べ物の消化と吸収が悪くなると言われています。 - 発音
奥歯を失うと、その箇所から空気が漏れてしまいます。
特に「ラ行」の発音が悪化し、不明瞭になってしまいます。 - 歯並びと顔に歪みが生じる
奥歯を失ったまま長期間放置してしまうと、歯並びが徐々に歪んでいきます。
それに伴い、顔の形も歪んでいき、左右非対称の輪郭になっていきます。 - 記憶力
奥歯がないことで、脳への血流が低下し、記憶力が低下してしまいます。
そのため、認知症が発症する可能性も高くなると言われています。
奥歯のインプラントのメリット
奥歯のインプラント治療には以下のようなメリットがあります。
1入れ歯とブリッジのような痛みと違和感がない
奥歯には前歯と比較して大きな力(ご自分の体重と同じ)が、かかります。
そのような強い力がかかると、入れ歯やブリッジだとたわんでしまい、食事の際に痛みを感じることがほとんどです。
インプラントはご自分の歯と同じように噛めるため、違和感もありません。
過剰な力が痛みを引き起こします
2硬いものでも噛める
歯を失ってしまった場合の治療方法の中で、噛む力が天然歯と同じなのはインプラントだけです。
- 入れ歯の噛む力は、天然歯の20%未満に過ぎない10kgに過ぎません。
- ブリッジの噛む力は、天然歯の約60%しかありません。
- インプラントは天然歯と同じで、50kg以上の力で噛むことができます。
噛む力の比較
3発音と滑舌が良くなる
奥歯がないとそこから空気が漏れるため、「ラ行」「イ段」の発音が難しくなってしまいます。
また入れ歯を使用していると、外れてしまうリスクがあるため、大きく口を開けることに恐怖心を抱かれる方もいらっしゃいます。
4噛み合わせの歪みがなくなる
奥歯を失ってしまうと、左右でバランス良く噛むことが難しくなるため、噛み合わせのバランスが崩れていきます。
肩こり、偏頭痛、腰痛、などの症状が発生することもあります。
インプラント治療で噛み合わせのバランスを整えることで、体のバランスも整えることができます。
奥歯のインプラントのデメリット
奥歯のインプラント治療には以下のようなデメリットがあります。
1治療費が高い
健康保険が適応されないため、自由診療(自費診療)となります。
また自由診療の、入れ歯やブリッジよりも治療費は高額になる傾向があります。
2外科治療である
インプラントは顎骨を削る必要があります。
また、歯茎を切開したり縫合する場合もあります。
高血圧・糖尿病・骨粗鬆症などの持病を抱えている患者様には、推奨できないこともあります。
3治療期間が長くなる場合がある
骨とインプラントが結合するには、最低でも2ヶ月はかかります。
入れ歯やブリッジと比較すると、やや治療期間は長くなる傾向があります。
4高い技術力が求められる
奥歯のインプラント(特に上顎)において、骨が足りないことがあります。
そのようなケースでは、ソケットリフトやサイナスリフトといった骨を増やす技術が求められます。
ソケットリフトのイメージ図
サイナスリフトのイメージ図
奥歯に1本インプラントを入れる際の費用と保証
スタンダードプラン
スタンダードプランの費用 | 440,000円(税込) |
---|---|
インプラント本体(人工歯根)の保証期間 | 10年 |
セラミック(上部構造)の保証期間 | 5年 |
プレミアムプラン
プレミアムプランの費用 | 473,000円(税込) |
---|---|
インプラント本体(人工歯根)の保証期間 | 10年 |
セラミック(上部構造)の保証期間 | 10年 |
※半年に1回の定期検診とクリーニングが保証の条件となります。
保証制度を設けている歯科医院はたくさんありますが、そのほとんどがインプラントの経過年数に応じて追加の治療費が発生する仕組みになっています。
長期間における無料の保証制度は、当院のインプラント治療技術の自信の現れです。
- 治療例 1
-
初診時口腔内写真。
右下の奥歯を失われたために、当院を受診されました。オペの最初の段階で、直径2ミリのピンを挿入して、インプラントの埋入方向の確認をします。
CT写真でもピンの位置を確認します。
最小限の切開を加えてから、インプラントを埋め込む穴をドリルで削っていきます。
直径6ミリ長さ7ミリのインプラント体を今回のケースでは選択しました。
インプラント体が定位置に埋め込まれました。
再度、CT写真を撮影して、予定された位置とズレがないことを確認します。
2本だけ縫ってオペ終了となります。
ここまでの所要時間はわずか15分しかかかっていません。
より短い処置時間を心がけることで、痛みと腫れもほとんどありません。オペから2ヶ月経過後の口腔内写真。
キレイに歯茎のお肉も治りました。光学印象(カメラによる型取り)用のパーツをセットしてから、嵌合状態をレントゲンで確認します。
型取りから2週間後に、精密で美しいセラミック歯(インプラント上部構造)が完成しました。
レントゲン写真で、嵌合精度(寸法精度)に問題がないことを確認します。
この段階で、インプラント本体とセラミック歯が寸分の狂いもなく接合されることが、インプラント治療成功の秘訣です。
当院のインプラント治療は20年30年と長持ちすることを目指しています。最後に、アクセスホール(インプラント本体とセラミック歯の着脱に使用する穴)を樹脂で埋めて、治療完了となります。
- 治療例 2
-
銀歯が外れてしまい他院で抜歯を宣告された方の、初診時口腔内写真。
他院では、骨を作る処置が必要と言われ、治療期間も8ヶ月以上と言われていました。古い土台を外してから、インプラント治療をスタートします。
抜歯と同時にインプラントを埋め込むことで、骨を作る手術を避けることができます。今ある少ない骨を温存することを心がけて抜歯しました。
今回選択したインプラントのサイズは直径4.5ミリ長さ10ミリ。
少ない骨でもどこかに噛み込ませることが、インプラント治療成功のポイントです。やや内側の真ん中にインプラントを埋め込みました。
仮蓋をセットします。
当たり前ですが、切っても縫ってもいないので、処置後の痛みも腫れもありません。
逆に言うと、切らない縫わないことで、患者様の体の再生能力がMAXになり、インプラント周囲には自然と骨ができていきます。インプラント周囲の隙間に、人工骨を敷き詰めて、オペ終了となります。
抜歯を含めて処置時間はわずか10分。
難しいことをせず、シンプルな治療計画を立てることが、患者様にとってメリットがあると考えています。インプラントオペから2ヶ月半後に、セラミック歯(上部構造)が入りました。
上部構造の型取りも、口腔内スキャナーを用いることで、患者様に苦痛を与えることはありません。最後に、アクセスホール(インプラントと上部構造を接合するスクリューを締めるための穴)を埋めて治療終了となります。
- 治療例 3
-
他院で抜歯してから、サイナスリフト(副鼻腔に骨を造る手術)を大学病院で行うことを提案された方の、初診時口腔内写真。
よりシンプルで、痛みも腫れもないインプラント治療を求めて、当院を受診されました。初診時CT写真。
確かにこの画像を見てしまうと、骨が1ミリもないと判断してしまうのも仕方ありません。
ただ、身体の再生能力を生かすことで、骨を増やすことは簡単にできます。抜歯して6週間待った後の口腔内写真。(インプラントオペ時)
ただ6週間待つだけで、綺麗に穴が塞がってきています。この状態でCT写真を撮影してみます。
柔らかい骨が4ミリ程できていることがわかります。
(真っ黒なところは空間で、グレーに写っているところが柔らかい骨です。)柔らかい骨を少しずつ圧縮して広げていきます。
この時に特殊なバー(デンサバー)を逆回転で使用することで、柔らかい骨が緻密な骨に変化していきます。デンサバーを使用した場合のイメージ図。
インプラントを埋め込む穴が完成しました。
ご自分の柔らかい骨で上顎洞底粘膜を挙上しています。直径5.5ミリ長さ7ミリのショートインプラントこの症例では選択しました。
長さが7ミリあれば、長期的に問題が起こらないという医学的根拠に基づいています。インプラントが理想的な位置に埋め込まれました。
インプラントに仮蓋を装着して、オペ終了となります。
インプラント埋入後のCT写真。
しっかりとインプラント周囲が骨で覆われていることが分かります。治療スタートしてから4ヶ月、インプラント埋入から2ヶ月半後に、最終的なインプラント上部構造(セラミック歯)が入りました。