奥歯のインプラント治療③と④では、インプラントを埋め込むだけの顎の骨量がないときに、どうやってリカバリーするか?というお話をしました。骨が足りないなら増やせばOKという考え方でしたね。
もともとの歯があった位置に、10mm以上の人工歯根(=インプラント)を埋め込む。これが理想なのは間違いありません。しかしながら、骨造成には大きなデメリットが1つあります。。。
それは治療期間が長くなること。例えば、腕や足を骨折した場合、整復固定をしてからギブスをはめます。ギブスをはめている3ヶ月の間に、骨がくっつき安定するのを待つわけです。歯科における骨造成も同じ概念のもとで編み出された手法なので、骨を造る=3ヶ月ほど治療期間が伸びることになってしまいます。
そんなわけで、もともとの歯があった位置にこだわらずに骨があるところを探して、そこにインプラントを入れましょう!という考え方が今日のお話です。
「右上の奥歯がグラグラして噛めない」という訴えで来院された患者様のレントゲン写真。
右上を拡大してみると、骨がないのが分かりますか? 顎の骨のラインをトレースをしたのが下の写真。
歯の全周にわたって骨が失われてしまった場合は、残念ながら抜歯するしかありません。患者様は、10年前に他院で治療したインプラント治療に満足されていたこともあり、今回もインプラント治療を選択されました。
遠方から来られている方なので、出来るだけ短い通院期間で終了したいという要望に応えるために、骨造成は行わないことに。グラグラしている歯を抜くと同時に、前後の骨があるスペースを利用して2本のインプラント埋入を計画しました。
1枚目の写真と比較してみて下さい。グラグラしていた歯がなくなり、その前後にインプラントが埋め込まれたのが分かると思います。1回の麻酔でかかった時間は1時間なのに、ここまで進みました。3ヶ月後にセラミックの歯を入れて終了となります。
理想を目指しながらも、患者様としっかりとコミュニケーションをとり、ご期待に応えることが出来た症例だと思います。