事前の準備を完璧にしてから、インプラントの埋入手術に臨むのは当たり前です。
ただオペ前にCT写真を撮影し、骨の厚み・幅・硬さを把握しても、オペ中に予期しないことが生じることもしばしば。
日本人は西洋人と比べて顎骨が薄く柔らかい人が多いので、骨質によってインプラントのメーカーやサイズを使い分ける必要があります。
硬い骨であればインプラントの表面性状はチタンの方が良いけれど、骨がすごく柔らかい場合は表明性状はHAコーティングされているものが良いです。。
ざっくり言ってしまうと、HA《ハイドロキシアパタイト》コーティングされているインプラントは骨を作る能力があるので、骨がない症例では有効な選択肢と言えます。
ただ、長期的な経過を追っていくとチタンインプラントの方がトラブルが起きにくいこともわかっているので、チタンインプラントを受け入れるだけの骨量があるかどうか?というのも選択の分かれ目とも言えるでしょう。
上のCT写真は、他院で何回も治療を受けたものの痛みが改善しなかった奥歯を抜いてから撮影したもの。残った骨の高さは5ミリ前後しかありません。
患者様は40代女性と若いこともあり、ソケットリフトと呼ばれる痛みも腫れも生じにくい骨増生方法を併用して、長さ7ミリ以上のインプラントを埋める計画を立てました。
今回用意したインプラントはこんな感じ。
上の4つがチタンインプラント、下の4つがHAインプラント。太さが4〜5ミリ、長さが6ミリ〜10ミリのサイズをそれぞれ用意。
現在のガイドラインだと奥歯の場合は、太さ4ミリ長さ10ミリのチタンインプラントがベストと言われているので、そこを目標にしながらも安全なオペを心がけました。
オペ後のCT写真がこちら。ソケットリフトは患者様の副鼻腔粘膜の丈夫さによって成功率が左右される術式です。平均的な厚みの副鼻腔粘膜の方だと、長さ3ミリくらいの骨増生が限界という文献も多いので、今回は無理をせず長さ8ミリのインプラントを選択しました。
長さが決まった後は太さをどうするかの選択になります。長さ8ミリならば直径4.5ミリがベストではあるものの、かなり骨が柔らかかったので長さ8ミリ直径5ミリのチタンインプラントを埋入することにしました。
しかし、チタンインプラントを埋入したものの、問題が発生。埋め込んだインプラントが少し揺れてしまっています。チタンインプラントは埋入直後の初期固定がとても大事なのです。要は、がっちり骨に食い込んでビクともしない状態が理想です。
初期固定が取れない場合は、1サイズ太いチタンインプラントか同じサイズのHAインプラントへの切り替えが必要となります。今回の症例だとこれ以上太いチタンインプラントだと、隣の歯への悪影響が予想されたので、同じサイズのHAインプラントを埋入し直しました。
こんな感じで、インプラントの種類やサイズを臨機応変にベストなもので対応するのが後々の成功につながる訳です。