アフガニスタンで長らく、現地の人々の為に支援を行なって来た、ペシャワール会代表の中村哲先生がテロリストの凶弾に倒れました。
医師でありながら、アフガニスタンの人達にとって最も必要なのは、医療ではなく水であるという信念に基づき、たくさんの井戸を掘り続け、世界的に知られた方でした。
もちろん、病院は無くてはならないものでありますが、清潔な水がないとそもそも何もできないわけです。水が安定的に供給されれば、食物を育てることもできますし、清潔な暮らしも営めます。
どんなに立派な病院を作って経験豊富な医師や看護師を揃えても、実のところ人間の健康に寄与できるのはごく一部の要素に過ぎないわけです。
中村哲先生のすごいところは、全くの専門外でありながら、自力で井戸を掘り、ついには大手ゼネコンが手がけるレベルの大規模用水路まで完成させたことです。銃器が出回り無秩序な環境にも関わらず、自分だけは危険なアフガニスタンに残っての活動でした。
実は、僕が大学6年生の時に、中村哲先生の講演会で直接お話を伺ったことがあります。
ちょうど、タリバンによるアフガニスタン支配を打倒するために、米軍の攻撃が行われている時期でもあり、中村先生も参考人として国会に呼ばれアフガニスタン情勢について質問をうけた直後の講演会でした。
「タリバンのおかげで現地の治安は格段に良くなった。過去の政権に比べたら、タリバンは現地の人々にとっては歓迎されている。今、戦争をしても何も解決はしない。」
という主張をしていたら、国会議員の先生方から「先生はタリバン派ですか?」「タリバンは悪でしょう」と言われて困惑したという、エピソードが印象的でした。
先進国のメディアによって報道されるニュースと現地の状況は、かなり乖離があるものなんだなと、妙に納得した記憶があります。
病気を治すことだけでなく、病気になる一番の理由である飢えを無くすために命をかけて取り組んでいた、日本人が誇れる素晴らしい方でした。
中村哲先生のご冥福を心よりお祈りいたします。