院長ブログ

院長 三浦 陽平

2023年 02月 03日

サイナスリフト(副鼻腔に骨を造る手術)が怖い方へのインプラント治療

インプラント治療は異物を体内に埋め込む手術が必要です。
外科的な処置である以上、どうしても偶発的なトラブルが生じてしまうことがあります。

長さ10ミリのスタンダードインプラントではなく、短いショートインプラントを使用することで、下顎のインプラント手術におけるトラブルはほぼゼロにすることが出来るようになりました

しかし、上顎のインプラント手術のトラブルの代表例である副鼻腔炎(上顎洞炎)は、まだ避けることが難しいと言われています。
現在でも大学病院や総合病院では上顎で骨が足りないケースでは、サイナスリフトと呼ばれる大規模な骨造成を行なってからの、インプラント埋入を行なっています。
(下のイラスト参照)

副鼻腔(上顎洞)を大きく切開して触ることで、炎症が発生します。
炎症が副鼻腔深部まで波及することで、鼻腔と副鼻腔をつないでいる自然孔というトンネルがつまってしまい、副鼻腔炎に移行します。
鼻中隔(鼻の骨)がもともと歪んでいる方は、この自然孔が生まれつき小さいことが分かっています。
ですので、ひどい副鼻腔炎が生じてしまった場合は、耳鼻科の先生に依頼して自然孔を大きく広げる手術が必要になってしまいます。

インプラントの手術を受けたことがきっかけで、鼻の手術も必要になってしまうのは、患者様に多大なるストレスがかかってしまいます。

副鼻腔炎(上顎洞炎)を引き起こすきっかけがサイナスリフトであるなら、他の方法で行えば良いだけです。
当院ではサイナスリフトの代わりに、ご自分の骨を利用したソケットリフトを行うことで、副鼻腔炎を100%に近い確率で防ぐことを目指しています。
(下のイラスト参照)

テクニックとしてはとてもシンプルで、通常は正回転で用いるドリルを逆回転で用いるだけです。
ドリルを逆回転で回すと、ご自分の骨が上顎洞を押し上げてくれるようなイメージです。
(下のイラスト参照)

他院さんや総合病院などで、サイナスリフトの合併症として副鼻腔炎のリスクを聞いて、インプラント治療を諦めた方はぜひ当院にご相談下さい。

人工骨を使用しないソケットリフトで、副鼻腔炎を回避したインプラント治療例②

初診時の口腔内写真。
左側から2番目の奥歯が壊れてしまい、総合病院で抜歯してからのサイナスリフトを提案されていました。
総合病院では、治療期間は1年以上、また副鼻腔炎のリスクも伝えられたため、当院を受診されました。
初診時のCT写真。
確かに骨は1ミリくらいの厚みしかありません。
ここまで骨がない場合は、一旦抜いてから6週間ほど待ちます。
それから、ソケットリフトを行うことで、リスクのあるサイナスリフトを避けることができます。
抜歯して6週間後の口腔内写真。
炎症を最小限にするために、小さい範囲で切開していきます。
小さい穴を開けて、そこからドリルを逆回転で回して広げていきます。
上顎洞底粘膜はわざと裂開させています。
粘膜が破けることで、逆にインプラントを埋め込むスペースが容易に確保できます。
更にドリルを逆回転で回して、ご自分の骨を上顎洞側に押し込んでいきます。
破けた上顎洞底粘膜を補修するため、骨ができるスペースを確保するために、コラーゲン製剤を置いてきます。
直径6ミリ長さ7ミリのワイドショートインプラントを、定位置に埋め込んでいきます。
インプラント埋入後のCT写真。
インプラント周囲のグレーな部分は徐々に骨に置き換わってくれます。
仮蓋を装着し人工骨を挿入していきます。
最後に3本だけ縫合して、オペ終了となります。
オペ時間はわずか15分のみなので、患者様へのストレスもありません。
オペから2ヶ月半後には、インプラント上部構造が完成しました。
レントゲンで適合状態も確認します。
インプラント上部構造セット後の口腔内写真。
天然歯と同じクオリティの機能性と美しさを再現できました。
この記事を書いた人
院長 三浦陽平

くげぬま海岸歯科クリニック 院長の三浦 陽平です。何歳になってもしっかり噛めるように、すてきな笑顔でいられるように、20年後・30年後を見据え、やり直しがない本当に良い治療を提供していきたいと思っています。

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